タイトル:The Teeny-Tiny Woman (日本語版タイトル:ちいさいちいさいおばさん)
文/絵:Paul Galdone
原作出版国:USA
初版年月日:1986年9月22日
購入できる絵本の種類:ペーパーバック/図書館 →ショップで商品を確認

あらすじ

小さい小さい村に住む小さい小さいおばさんはある日、小さい小さい帽子をかぶって、小さい小さい教会の庭へ行きました。小さい小さいお墓に、小さい小さい骨が落ちているのを見て、小さい小さいおばさんは思いました。そうだこの小さい小さい骨で、小さい小さい夕食の小さい小さいスープを作ろう。小さい小さいおばさんは、その小さい小さい骨を、小さい小さい家に持ち帰るのですが――

レビュー

ちょっと不気味な異色の絵本
あらすじを読んでいただければわかると思いますが、はっきり言って不気味です、この絵本。お墓に骨が落ちているというだけで不気味なのに、その骨を持ち帰ってスープを作ろうとするなんて……。そうしておばさんは骨を持ち帰るわけですが、その後の展開もホラーです。むしろいっそう不気味になると言ってよく、全編を通してかなり不気味な物語――というより怪談といっていいでしょう。

また、絵も相応に不気味です。主人公(?)のおばさんは、ちょっと小太りの年齢不詳に描かれており、そんな彼女が薄笑みをうかべお墓から骨を拾って帰るものですから、その不気味さといったらありません。物語も不気味、絵も不気味……そういう物語が苦手な方には、あまりおすすめできる作品ではないのかも知れません。

ただこの作品には、そんな不気味さとは不調和と言ってもいい、とても小気味よく楽しい要素が含まれているのです。

特筆すべきは英文のリズム
この絵本の魅力は英文のリズムです。この作品に登場するものにはたいてい“teeny-tiny(小さい小さい)”という形容詞がつくのですが、この形容詞がついた名詞が文章の中に連続することで生まれるリズムが、実に小気味よくて楽しいのです。この作品の文章を音読していると、まるで自分が歌を歌っているかのような錯覚に陥ります。この英文のリズムの楽しさは、ぜひ実際に読んでたしかめていただきたいものです。

さらに、後半に出てくる“Give me my bone !(おれの骨を返せ!)”ですが、うちの子供たちはなぜかこれが大好きなようで、とても楽しそうに復唱します。こんな不気味な物語の、不気味な台詞なのに不思議ですが、何か子供の心を惹きつけるものがあるのかも知れません。

こういう作品があるから英語の絵本は楽しい
私がこの作品に出会ったのは、子供の頃、親から読み聞かせられた絵本でした。それは日本語の絵本だったのですが、その物語の強烈な印象が忘れられず、大人になるまでずっと頭の中にこびりついていました。

大人になり、英語の絵本を集めるようになってふと思い出し、検索をかけて三十年ぶりに再会したこの絵本は、やはり子供の頃の印象そのままのひどく不気味なものでした。そして手にした英語の絵本の絵もやはり不気味……けれども、その不気味さとは裏腹に、私はこの絵本をたいへん気に入っています。

この作品は、英国の民話に基づくものだということです。おそらくこの物語は、私たち日本人の頭からは決して生み出されないものではないでしょうか。大人になった今、この作品のような絵本が世界にはあるのだという多様性が、何より面白く興味深いものに感じられます。こういった作品があるから、私は英語の絵本を集めるのをやめられないのかも知れません。

The Teeny-Tiny Woman (Paul Galdone Classics)
Paul Galdone
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