タイトル:My House(日本語版タイトル:ちいちゃん)
文/絵:Lisa Desimini
原作出版国:USA
初版年月日:1997年9月
購入できる絵本の種類:ハードカバー/ペーパーバック/ →ショップで商品を確認

あらすじ

私のお家は夜明けに目覚めます。そして、お空に絵を描きます。秋には木の葉のドレスをまとい、冬には雪の中にうずもれます――丘の上にぽつんと建つ小さな家。四季の移りかわりと一日の流れのなかでそのお家が見せる折々の表情を、コメント付きのポートレートのように並べた「私のお家」のプロファイル。 

レビュー

お家への愛情がたっぷりつまった小さな作品
小さなお家を愛情たっぷりに描いた、とてもお洒落でかわいい絵本です。構成はいたってシンプルで、お家の絵が各ページに描かれるとともに、その説明である短い文が添えられています。雨風にじっとたえるお家、春の日のしあわせそうなお家、霧のなかにはっきりと見えないお家、王冠のように太陽をいただいたお家――そのどれもがかわいらしく、お家に対する作者の愛情が感じられます。

かわいらしいだけでなく、とてもお洒落な絵です。そうです、この作品についてアピールしたいのは、なんと言っても絵がお洒落だということです。私がこの絵本と出会ったのは、例によって近隣の絵本図書館だったのですが、このお洒落な絵に魅せられて、既に絶版となっているハードカバーをわざわざ米国から直輸入してしまったほどです(苦笑)。

これまで見たことがないテイストの絵に魅せられて
そのお洒落な絵について――ですが、厳密には絵ではありません。少なくとも手描きの絵ではなく、切り絵のようにも見えますが、単純な切り絵でもなさそうです。写真や絵を、色々な形に切って貼り合わせたコラージュのような絵で、そう言うとなにかごちゃごちゃしたものを思い浮かべる方がいるかも知れませんが、とてもシンプルで落ち着いた絵です。

これまでに見たことがないテイストの絵――というのが、初めてこの作品を目にした私の感想でした。最初はやはりどうしても外国的なにおいのするその絵に素直に入りこむことができませんでした。けれども二度、三度と読むうちに、その絵の持つ魅力に気づかされ、そこで一気にファンになりました。

今、この絵本に対する私の評価は、「喫茶店に置いてあったら嬉しい絵本ナンバーワン」です(笑)。静かでお洒落な喫茶店に、こんな絵本が置いてあったら素敵だろうな……と。自分が喫茶店を開くとしたら、まず真っ先にこの絵本をディスプレイします。そしてもちろん、我が家の本棚にこんなお洒落な絵本を並べられることに喜びを感じています。

平易でシンプルな文による「装飾」
独特な絵に比べ、文はいたってシンプルで簡単です。ページごとの絵を説明する短い文章が、そっと添える感じでつけられています。私の印象では、この絵本において、文は絵の装飾です。お洒落で個性的な絵を、いっそうお洒落で個性的にひきたたせる役割の文章――そんなふうに感じています。

私が特に好きなのが、夏の陽に照らされるお家の絵に添えられた“(It) shimmers and sizzles on hot summer days.”のくだりです。充実した夏の陽ざしを受けて輝くお家のすがたを、この一文がとても鮮やかに装飾していると感じるのです。

英語の絵本というより、画集かなにかの紹介のようになってしまいましたが、絵本それ自体に宝石のような価値を認める方におすすめしたい、大好きな一冊です。

My House (An Owlet Book)

My House (An Owlet Book)

posted with amazlet at 16.10.02
Lisa Desimini
Owlet