タイトル:Bears in the Night(日本語版 無し)
文/絵:Stan & Jan Berenstain
原作出版国:USA
初版年月日:1971年8月12日
購入できる絵本の種類:ハードカバー/ペーパーバック/ →ショップで商品を確認

あらすじ

7匹のクマたちはベッドの中、フクロウの声で目覚めます。こっそりとベッドを抜け出し、二階の窓から木をつたいおりて外へと出ていきます。壁をのりこえ、橋をくぐって、池のまわりをめぐり――やんちゃでかわいいクマたちの、ちょっとだけスリリングな一夜の冒険の物語。 

レビュー

この絵本が私にとってのファーストブックでした
はじめての英語の絵本――私にとってはこの絵本が“First Book”でした。英語教育に熱心だった私の母親が、絵本というより英語教材として購入し、私たちに読み聞かせてくれたのです。そういったこともあり、個人的にはとても思い入れのある一冊です。

“Bears in the Night”というタイトルどおり、眠れないクマの兄弟たちが家を抜け出し、近所をうろつきまわるという物語です。絵柄はかわいらしく、表情といい仕草といい実に愛らしいクマたちです。もっとも、クマと言われればクマですが、子供の頃から私にはオオカミにしか見えませんでしたが(笑)。

私の母親が購入した経緯からもあきらかなように、この作品は絵本というより英語教材です。そして英語教材としてのこの作品は、おそらく英語にはじめてふれる人に最適な教材のひとつと言っていいでしょう。

英語にはじめてふれる人に最適の英語教材
この絵本の最初のページに記されている文は“In bed”それだけです。あとは“WHOOOOO”というフクロウの鳴き声と、ベッドの中で眠れないでいるクマたちの絵。次のページに記されている文は“Out of bed”それだけ。ベッドを抜け出して窓から外へ出ようとしているクマたちの絵と。

以上の説明で、この絵本がどういった層を対象とした英語教材であるかわかると思います。子供だった私は、この一冊の絵本を何度読み聞かせられたのでしょう。最小単位の前置詞と名詞の組み合わせによる形容詞句。主語もbe動詞もなく、ただそれだけの小さな文章の羅列が、30年の歳月を経た今も、私の頭にしっかりと残っています。

ただ、冠詞という我々になじみのうすい品詞を考えたとき、この作品は簡単に「幼児向け」とは言い切れないかも知れません。“In bed”および“Out of bed”の“bed”に冠詞がつかず、“At the window”の“window”に“the”という冠詞がつく。子供の頃には何の疑問もおぼえず、ただ読み聞かせられるままに暗記したそれが、英語の文法を学習した今、はじめてなぜそうであったか理解できます。

そして30年を経た今でも、私はちゃんと“In bed”という表現を、母親に読み聞かせられたままの意味と表現で覚えているのです。私にとってのファーストブックは、少なくとも私にとって、素晴らしい英語教材だったと言えるのではないでしょうか。

今にして見直す「絵本」としての完成度
そして、出会いから30年以上の歳月を経た今、あらためてこの絵本を手に取り見開いてみれば、子供だった頃には気づかなかったこの絵本の「絵本」としての魅力に気づかされます。薄暗い月夜を描いた地味な彩色の絵が、今の私には外国的――というよりはっきり米国的なテイストと躍動感に満ちた、実に面白いものに感じられます。

かつては英語教材の一要素としてしか眺められなかった前置詞と名詞の羅列も、絵本の文章として見直したとき、また新たな色あいをもって目にとびこんできます。私の所有しているハードカバーの背表紙に書かれた、この絵本の紹介である“THE WORDS are few and easy, and have a happy, catchy rhythm.”という一文が、今の私の評価そのものです。

私は、この絵本がファーストブックで良かったと思います。そして今、この絵本をすべての人にファーストブックとしておすすめしたいです。

Bears in the Night (Bright and Early Books)
Stan Berenstain Jan Berenstain
HarperCollins Children’s Books
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