タイトル:Bedtime for Frances (日本語版タイトル:おやすみなさい フランシス)
文:Russell Hoban
絵:Garth Williams
原作出版国:USA
初版年月日:1960年(月日不明)
購入できる絵本の種類:ハードカバー/ペーパーバック →ショップで商品を確認
あらすじ
夜7時になりました。もうおやすみの時間なので、フランシスはお父さんお母さんにおやすみなさいのキスをしたあと、お父さんにおんぶしてもらって自分の部屋に向かいます。もう一回お父さんとお母さんにキスをして、一人になった部屋で眠ろうとするのですが、フランシスはなかなか眠れません。そのうちに部屋の中になにかこわいものがいるような気がしてきてお父さんを呼びにいくのですが――
レビュー
子供の目に映る「夜」の怪しさ
あなぐまのフランシスの、なかなか眠れない一夜を描いた絵本です。フランシスとその家族であるお父さんお母さんは、だいぶリアルなあなぐまとして描かれていますが、それぞれのキャラクターがしっかりと絵に現れているのが印象的です。フランシスはかわいらしく、お母さんはやさしい女性に描かれています。そしてもう一人の主人公というべきお父さんは、子供にやさしく接しながらも厳格な父親としてのキャラクターが表情のひとつひとつに現れています。
絵は白のカンバスで木炭で描いたようなタッチの黒い線をベースに、ライトグリーンがところどころに加えられたシンプルな色彩構成となっています。この色彩構成が、かえって物語をしっかりと引き立てています。なんでもないものがふとこわいものに見えてしまう夜という時間。そんな子供の目に映る「夜」の怪しさを、情感たっぷりに描いたのがこの“Bedtime for Frances”という作品の魅力です。
家族との団らんと「こわいもの」とをいったりきたり
フランシスがお父さんお母さんとおやすみのキスをするところから始まるこの作品は、就寝にむかう家族の団らんと、一人で寝ようとして寝られないフランシスの様子とが交互に描写されます。一人で寝ようとするフランシスの目には、部屋の中のなんでもないものが「こわいもの」に見えてしまいます。椅子にかかったガウン、天井の割れ目、かたかたと音を立てる窓……不安になってお父さんを呼びにいき、なんでもないことだと言われてまた部屋に戻ります。
この家族の団らんと、一人でいるときのフランシスの不安とが、とても魅力的な好対照をなしているのです。たとえば椅子にかかったガウンがこわいものに見えてお父さんを呼びにいったとき、お父さんとお母さんは二人でケーキを食べながらお茶をしていて、そのケーキを少しだけフランシスに食べさせてくれます。そこには揺るがない安心な場所があって、そこから離れるとフランシスはまた不安になります。
この安心な家族の団らんと、なんでもないものが「こわいもの」に見える不安とのいったりきたりが、それぞれの場面をとても印象的なものにしています。
何年経っても色あせない、印象に残る絵本
この絵本も例によって私が子供の頃、親に日本語の絵本を読み聞かせられ、自分に子供ができてから英語の絵本を買い求めたものです。自分が子供だった頃の印象としては、なにかよくわからないこわいものが出てきたということと、何よりお父さんお母さんにケーキをもらうシーンの印象でした。起きてきてしまったフランシスに、仕方ないという感じでケーキをくれるお父さんお母さんの心情が、子供心にどこかわかる気がして、印象深く残っていたのです。
大人になって英語の絵本を買い求めて、この作品が50年以上にわたり読み継がれてきたロングセラーだということを知りました。そして英語の絵本としてこの作品を読み、子供の頃には見えなかった色々なものがこの作品の中に埋め込まれていたのだということを理解しました。何年経っても色あせない、心に残る名作絵本だと思います。
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