タイトル:The Giving Tree(日本語版タイトル:おおきな木)
文/絵:Shel Silverstein
原作出版国:USA
初版年月日:1964年10月7日
購入できる絵本の種類:ハードカバー →ショップで商品を確認

あらすじ

少年は木が大好きでした。葉っぱを集めてかんむりを作ったり、木にのぼって枝に揺られて遊んだり、りんごを食べたり、木陰で休んだり。木は、とても幸せでした。けれども少年が大きくなって遊びに来なくなり、木はひとりぼっちになりました。久しぶりに木のところに来た少年は、もう青年になっていました。木は言いました。「のぼっておいでよ。一緒に遊んで幸せになろう」木に応えて青年は言いました。「僕はもうのぼって遊ぶには大きくなりすぎたよ。それよりお金がほしいんだ。僕にお金をくれないかな――

レビュー

英語の教科書にも載った有名な作品
私がこの絵本に出逢ったのは、隣の市にある絵本図書館でした。読んですぐ、これは素晴らしい作品だと思い、ネットで調べたところ、英語の教科書にも載った有名な作品であることを知りました。どうりで……という思いと、これを教科書で読んだ子供たちは何を感じたのだろう……という思いが入り乱れ、複雑な気持ちになりました。

何十年にもわたって読み継がれ、教科書にも載った名作絵本であることは疑いありません。ですが、この作品は単純に一口で「良い作品」とは言い切れない、読み手に色々なことを考えさせる作品だと思います。

シンプルな線で描かれた絵と、すこしだけ寂しい物語
この作品の絵に、色はありません。サインペンで引かれたようなはっきりした線で、木と少年だけが描かれています。シンプルな線で描かれたモノクロームのイラスト、というのが一番近いかも知れません。

英文も同様にシンプルで、難しい言い回しや単語は使われていません。いつもそばで遊んでいた少年が次第に来なくなり、ひとりぼっちになった木。そこへ成長したかつての少年が訪ねてくるのですが、もう昔のように遊ぶことはありません。かつての少年は木にお金を求めます。そうすると木はこれを売ってお金にすればいいとリンゴをくれます。かつての少年が来るたびに木は自分の持っているものを与えます。ただそれだけの物語です。……ただそれだけの物語が、どうしてこれほどまでに人の心をうつのでしょう。

なんの見返りも求めず、ただ与え続ける木。ただ与え続けることで幸せだという木。けれどもかつての少年が、自分の幹をいかだにして遠くへ行ってしまったとき、本当は違うと、心をのぞかせた木。“And the tree was happy. . .but not really.” この一文はどう訳すべきでしょう? 私ならこう訳します。「木はしあわせでした……ほんとうは少しさみしかったけれど。」

この作品が伝えたかったことは
この絵本の読後感は、人それぞれだと思います。かつての少年にただ与え続け、なんの見返りも求めない木のあり方は、様々な解釈の余地を残しています。そこにキリスト教的な「愛」をみる人は当然いるのでしょう。また、与える木と、与えられるかつての少年とが、ともに衰えてゆく姿に、人生の意味を見いだす人もいると思います。色々な解釈ができる深い物語――それがこの絵本の魅力であることは否定しません。

ですが、私はこの作品に、解釈など必要ないと思います。

私はこの絵本を読むと、今でも泣いてしまいます。理由はよくわからないのですが、なぜか泣いてしまうのです。だからこの作品は私にとって大好きな絵本ですが、子供たちに読み聞かせるのが少し苦手な一冊でもあります。

The Giving Tree

The Giving Tree

posted with amazlet at 16.07.03
Shel Silverstein
HarperCollins
売り上げランキング: 107