タイトル:I Was So Mad (日本語版 無し)
文/絵:Mercer Mayer
原作出版国:USA
初版年月日:2000年11月1日
購入できる絵本の種類:ハードカバー/ペーパーバック →ショップで商品を確認
あらすじ
バスタブにカエルを入れたらお母さんにダメと言われた……僕は怒ったぞ。妹の人形の家で遊んでいたらお父さんにダメと言われた……僕は怒ったぞ。干してあるシーツでかくれんぼをしておばあちゃんに叱られ、庭に水やりをしておじいちゃんに叱られ、何をやっても叱られる主人公“Little Critter”の怒りはおさまりません。やりたいことを何ひとつやらせてもらえない主人公がついにとった行動とは……?
レビュー
「リトル・クリッターシリーズ」の快作
獣とも怪物ともつかない奇妙な生命体“Little Cretter”シリーズの作品です。“All by Myself”よりも少し成長した主人公が、やりたい放題いたずらをして大人たちに叱られ、怒って怒って怒りまくる物語です。
この作品には、主人公の怒りをあらわす“I was so mad.”が繰り返し出てきます。そればかりでなく、“Was I ever mad.”や“I was too mad.”というように、さまざまな表現を駆使して(?)怒りをあらわにします。子供に読み聞かせる絵本に倒置法は少しレベルが高いようにも思えますが、こうした表現が自然に出てくるところもこの作品の魅力だと思います。
男の子の心理をあざやかに描写
この作品では、主人公が実に様々ないたずらをし、そのたびに誰かに叱られていたずらを禁止されます。しかし、主人公はそれらをいたずらだとは思っていません。ただやりたいからやっているだけなのです。このあたりに、反抗期の男の子の心理があざやかに描写されているように感じます。
やることなすこと叱られて、怒りのあまりついに家出すると言い出す主人公の姿は、きかん気の強い我が家のリトル・クリッターたちに重なります。この絵本のユニークなのは、そんな主人公を母親が笑顔で送り出そうとするところです。「いつでも帰っておいで」とでも言いたげな表情で手を振る真剣みのなさが、この作品の良い意味での「ゆるさ」を象徴しているように思います。
どういうわけか、やっぱり子供は大好きな絵本
そんな感じの作品ですが、我が家の子供たちはやっぱり大好きです。特に、大人たちが主人公のいたずらを禁止する“No, you can’t.”という台詞がなぜか大好きで、「ダメ!」という感情をこめて読むほど楽しいらしくけらけらと笑っています。
同シリーズの作品“All by Myself”で触れたように、少し気持ちの悪いところがある絵が子供心にヒットするのかも知れません。ですがこの作品については、いたずら盛りの男の子そのものの主人公の心情と行動に、同じ男の子として共感するところがあるのではないでしょうか。
なお、この作品のタイトル“I was so mad.”は、アメリカンイングリッシュの口語としての色合いが強い表現です。私にとって“mad”という単語は、ずいぶん学習が進むまで「狂った」という意味にとどまっていましたが、我が子にとってはこの絵本での意味がスタートになるのだということを思えば、なかなか感慨深いものがあります。
I Was So Mad (Little Critter) (Look-Look)
Random House Books for Young Readers (2000-11-01)
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