タイトル:The Princess and the Pea(日本語版タイトル:エンドウ豆の上に寝たお姫さま)
文:Hans Christian Andersen
絵:Alain Vaes
原作出版国:Danmark
初版年月日:1835年(月日不明)
購入できる絵本の種類:ペーパーバック/学校 →ショップで商品を確認

あらすじ

王子さまはお姫さまと結婚したいと願っていました。本物のお姫さまでなければだめです。王子さまはお姫さまを求めてあちこち旅しますが、本物のお姫さまはなかなか見つかりません。そんなある日、ひどいあらしが来て大雨の降る夜に、お城の門を叩く音がしました。王さま自ら門をあけると、そこにはずぶぬれのお姫さまが立っていました。「私は本物のお姫さまです、どうか一晩泊めてください」と言うお姫さま。さて、彼女は本当に、本物のお姫さまなのでしょうか? 

レビュー

知る人ぞ知るアンデルセンの名作童話
この作品はアンデルセン童話です。マッチ売りの少女や人魚姫など、誰でも知っている童話に比べれば知名度は低いですが、知る人ぞ知る名作童話です。ただ、読む人によっては名作というより、「迷作」と感じることもあるのではないかとも思いますが……。

私が所有している絵本は今回紹介しているものです。しかし、そこはさすがアンデルセン童話というべきでしょうか、世界各国、様々な絵描きが絵をつけたいくつもの版が存在します。文に関しても、英文自身が翻訳ということもあってか、様々な訳のものがあるようです。

ペシミスティックなアンデルセン童話では異色の物語
アンデルセン童話といえばペシミスティック――恵まれない少女が寒い夜にひとり天に召されたり、声と引き換えにひととき人間となったけれども最後には海の泡となって消えたりと、悲しい展開の作品が多いわけですが、この作品はひと味違った異色の作品です。

本物のお姫さまでないと結婚したくないという王子さま。そんな王子さまのもとに嵐の夜、自分は本物のお姫さまだという女性が現れるのですが、お后さまがそれを確かめるためにとった方法というのが想像の上をゆくものなのです。正直、私は最初にこの物語を読んだとき、「なんだそりゃ」と思いました(苦笑)。それで彼女が本物のお姫さまだとわかってめでたし、めでたし……と、本当にそれでいいのか? という思いは今でもあります。

おそらくこの物語を読んで、何の疑問もなくその通りだとうなずく人は一人もいないと思います。そういった「疑問」こそが、あるいはこの物語の魅力なのかも知れません。

プリンセスを目指す女の子が一度は読むべき作品(?)
私がはじめてこの童話に触れたのは、まだ子供だった頃でした。そのとき読んだものは日本語の絵本でしたが、他の絵本とは明らかに違う物語が強烈に頭に残り、忘れられない作品となりました。大人になり、「そういえばこんな絵本あったな」と、記憶をつてに検索をかけ、そこで私の頭に残っていたそれが、かの有名なアンデルセン童話に名を連ねる作品であったと初めて知ったのです。

物語には批判も多い作品です。「いい作品」と言ってしまっていいのかさえもわかりません。けれども私はこの絵本は、女の子が一度は読むべき作品だと思っています。家には女の子がいないので、小さな女の子のいる友人にこの絵本をプレゼントしてしました(苦笑)。その友人によれば、娘さんはすっかりこの絵本のとりことなり、毎日のように読んでくれとせがんでうるさいほどだということです。

一度でいいから、こういう絵本を自分の娘に読み聞かせたかった……と、ないものねだりをしてもしょうがないことはわかっているのですが。