タイトル:A Color of His Own(日本語版タイトル:じぶんだけのいろーいろいろさがしたカメレオンのはなし)
文/絵:Leo Lionni
原作出版国:USA
初版年月日:2000年11月14日
購入できる絵本の種類:ハードカバー/ペーパーバック/ボードブック →ショップで商品を確認

あらすじ

きんぎょは赤色、ぞうは灰色、ぶたはピンク。動物はみんな自分の色を持っています。でも、カメレオンにだけは自分の色がありません。まわりの色に合わせて色が変わってしまうのです。カメレオンは自分の色がほしくなり、いろんな場所をさがしまわります。さて、カメレオンは自分だけの色をみつけることができるのでしょうか? 

レビュー

レオ・レオーニの絵の魅力があふれる一作
“Swimmy”で有名なレオ・レオーニの作品です。この絵本の魅力としてまず挙げたいのは、レオ・レオーニの絵の「可愛さ」です。主人公であるカメレオンが、まわりの色に合わせて色を変える様子が、版画のような氏特有の絵で描かれているのですが、きょとんとしたカメレオンの顔がなんとも可愛く、カラフルな絵柄と相まってこの作品の大きなチャームポイントになっています。

レモンの上に乗ればカメレオンは黄色に、トラの上に乗ればトラ縞に――といったように、それぞれのページの絵はひとつの色を基調として、その色を説明する文章とともに構成されています。一見、単調に思えるその構成が、全体としてみたときこの絵本にリズムと統一感を与えているように思います。

なかなか出てこない「裏返しの発想」
この作品の主人公は一匹のカメレオンです。カメレオンといえば周りの色に合わせて自由に体の色を変えられる――というのが一般的な見方だと思いますが、この作品ではそれを逆に見て、「自分の意思にかかわらず、周りの色に合わせて自然に体の色が変わってしまうこと」を題材としています。

周りの色に合わせて色が変わってしまうから、自分の色というものがない。それを寂しく感じるカメレオンの試行錯誤の物語――それがこの絵本の概要なのですが、この逆転の発想は大人にはなかなか出てこないもののように思います。

レオ・レオーニが子供の心で考えたカメレオンの悩み。それが子供達に与える共感。この作品が世界中で読まれている理由は、そのあたりにあるのではないでしょうか。

物語は子供向けでも英文は中級以上
可愛らしい絵柄と素朴な物語という子供向けの内容ではありますが、英文はしっかりと「英文」してます。未来形、仮定法など、中学卒業程度の文法が次々出てきますので、幼児への読み聞かせには少し高度な内容かもしれません。

ただ、自分だけの色を手に入れたいカメレオンという軸がはっきりしており、物語はすべてその軸に沿って進みますので、詳しい文法まで理解できなくとも、ある程度の年齢の子供であれば、おはなしは理解できる構成になっています。

逆にこうした絵本で、少し難しい英文に触れさせておくことで、子供が大きくなったとき、すんなりと文法を受け入れることができる、といった効果があるのではないかと、個人的には期待しています。

少し難しい英文を含んではいますが、とても読みやすい名作絵本です。

A Color of His Own

A Color of His Own

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Leo Lionni
Knopf Books for Young Readers (2000-11-14)
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